2006年7月6日に開催した意見交換会の報告です。

アフガニスタンDDR意見交換会

日時 2006年7月6日(木)12:00〜13:20
会場 アジア開発銀行研究所会議室

アフガニスタン事務所より
DDR専門家マイク・ピリンジャーが来日
©IOM 2006

日本政府が7月5日に主催した、アフガニスタンの「平和の定着」に関する第2回東京会議に出席するため、IOMアフガニスタン事務所よりマイク・ピリンジャー(Senior Programme & Policy Advisor)が来日しました。ピリンジャーはアフガニスタン赴任前にも、モザンビーク、アンゴラ、コソボ、IOM本部で一貫してDDR(元戦闘員の武装解除[Disarmament]、動員解除[Demobilization]、社会復帰[Reintegration])を担当してきた専門家です。

この機会に、アジア開発銀行研究所(ADBI)の協力のもと、アフガニスタンのDDRについての意見交換会を開催しました。
ADBIの方々を始め、アフガニスタン支援に関わる国際機関、NGO、研究機関などからの参加をいただき、有意義な意見交換の時間が持たれました。

IOMによるアフガニスタンにおけるDDR

まずピリンジャーより、IOMのアフガニスタンにおけるDDRの活動について説明がありました。

7月5日のアフガニスタンの「平和の定着」に関する第2回東京会議は、アフガニスタンにおける60,000人の元戦闘員を対象としたDDRの終了を公式にアナウンスするものでした。今後は、麻薬の密輸とも密接なつながりのある「非合法武装集団の解体(DIAG)」が課題となります。この問題が解決しなければ、アフガニスタンの治安の安定は期待できません。人々に戦闘行為の代わりとなる生計手段を提供する手助けをしなければ、平和を定着させることはできないのです。

紛争は人口の移動を引き起こし、国内避難民(IDP)を発生させます。IDPの中には、さまざまな地域で戦闘に従事させられた元戦闘員も含まれます。大勢のIDPの中で比較して少数の元戦闘員への支援は見過ごされがちですが、政治的にセンシティブで、適切な支援がなければ平和の不安定要因になりかねない元戦闘員には特別な配慮が必要です。

IOMは冷戦後から、紛争後の複雑な状況下での支援、特にDDRの活動に1992年のモザンビークから関わっています。アフガニスタンでは、2003年に設置されたDDR実施機関である「アフガニスタン新生計画(ANBP)」のもとで、調整機関である国連開発計画(UNDP)のパートナーとして活動しています。UNDPを始めとした支援により、1,720万ドルの規模で事業を実施してきました。WFPからは、労働やトレーニングの対価として食糧を配布するFood for Work、Food for Trainingの食糧の提供を受けています。またUNICEFとは、元子ども兵士に対する収入向上の支援で協力しています。

IOMはマザリシャリフ、マイマナ、ヘラート、カブール、ガルデスに拠点を置き、アフガニスタン34州のうち17州(北部・西部・中部・南東部)でDDRの活動を行っています。ANBPの支援対象である60,000人の元戦闘員のうち、IOMは北部で8,000人、西部で4,000人、中部で5,000人、南東部で200人の計17,200人(約30%)を支援しました。

アフガニスタン
元戦闘員のOJT ©IOM 2006
アフガニスタン
元戦闘員への小規模ビジネス支援 ©IOM 2006
IOMはアフガニスタンで、DDRのうちRの元戦闘員の社会復帰を支援していますが、そのためには、元戦闘員一人ひとりのニーズを把握することが必要です。カウンセリングを通じて把握した元戦闘員のニーズを、別途調査した地域の支援サービス提供者の情報とマッチングさせます。適切な就業機会がなければ、新しい機会を作り出さなければなりません。長年戦闘行為に従事していた元戦闘員が多いので、職業訓練の提供は不可欠です。職業訓練の提供が難しければ、実際の職場で実地研修(OJT)の場を提供してくれるビジネスオーナーなどを探します。職業訓練だけでなく、識字教育のニーズも多くあります。また、農村部の出身者が多いので、農業の支援も選択肢の一つです。小規模ビジネスの起業も支援します。小規模な貸付支援を実施することもあります。紛争後の不安定な社会では投資も少なく、大きなビジネス機会は期待できないので、可能な規模からのビジネスを支援します。国の状況によりますが、DDRの事業が安定するまで通常3〜5年はかかります。大規模なビジネス機会の到来など、状況の改善を座して待つのではなく、コミュニテイを巻き込んだディスカッションを通じて、共通の身近な問題の改善から始めることが重要です。政府はまだコミュテニィの問題を解決するまでの余力がないケースがほとんどです。

生計手段の提供を通じた社会復帰の支援には、地元の機関への引継ぎを含めた出口戦略が重要です。現在アフガニスタンでは、元戦闘員への支援を政府による求職者への支援システムに統合しようとしています。

私のIOMアフガニスタンにおける役割は、特に民軍協力(CIMIC- Civil Military Cooperation)の促進にあります。IOMは国際治安支援部隊(ISAF- International Security Assistance Force)とMOU(覚書)を結んでおり、私はISAFの本部に拠点を置いて、情報交換、および連携に努めています。ISAFは国連安保理決議を受けて、カブール及び周辺地域の治安維持を担当するためにNATO諸国を始めとした国々から派遣されています。軍と協力することに批判的な意見を述べる人もいますが、協力することで得られる利益の方が大きいと考えます。以前は国際的な利害関係の対立による紛争が多い傾向にありましたが、現在は地域内での衝突から紛争が起こることが多いと言えます。国際的な紛争に拡大しないうちに、地域内・一国内での社会経済的問題を解決して経済発展を促進し、地域の安定を図ることが有効です。これまで以上に軍と素早い情報交換を行い、災害発生時などに連携して支援活動を行うなど、地域の安定を図る試みが重要です。情報を交換するのであって、軍と人道支援団体の役割を交換するのではないのです。実際に、人道支援がすでに実施されている地域の治安確保や、安全状況の改善がされたばかりの地域での治安確保について協力しています。新しく治安が改善された地域で迅速に人道援助を始めることが、状況を逆行させずに平和を定着させるために非常に重要です。人道支援団体と軍との連携は、得るものが大きいと言えるでしょう。

質疑応答

参加者からの質問にピリンジャーが回答しました。

Q:元戦闘員に提供する生計手段のオプションについて、農業が多いということでしたが、他にどのような可能性がありますか。

A:どこの地域であっても、元戦闘員は高い教育を受けていることが少なく、農業に従事する者が多くなります。まずは農業でより生産性の高い方法を教えて、その後ビジネスとして小規模の商取引に発展させるケースが多くあります。元戦闘員の希望が最優先なので、農業を強要するのではありません。元戦闘員のスキルと現地の経済状況を見ながら、ニーズを満たすように努力しています。アンゴラでは農業に戻る者が多かったのですが、コソボでは小規模事業を始める者が多くいました。
アフガニスタン
農業に従事する元戦闘員が多い ©IOM 2006

Q:先進国であれ途上国であれ、非合法に近いビジネスは存在します。そういったビジネスを駆逐するのも可能ですが、その存在を容認するアプローチもあり得ます。最近では売春を合法化し、共存を図っている国もあります。アフガニスタンでのアプローチはどのようなものですか。

A:アフガニスタンでも非合法なビジネスは存在しています。しかし政府が取り締まる力は不十分で、非合法なビジネスをすぐになくすことは不可能です。現在は人々が抱える問題を認識して将来的な解決を模索しながら、共存を図っています。表面的な事業の効果だけを見るのではなく、長期的な視野での支援が必要です。

アフガニスタン支援に関わる専門家との意見交換
©IOM 2006

Q:具体的には元戦闘員にどのように武器を放棄させるのですか。

A:IOMが直接武装解除や動員解除を実施することはなく、和平合意におけるトップレベルの交渉で取り決められる性質のものです。IOMは特に、元戦闘員が集められている場所に赴き登録を開始します。実際の武器回収は国連平和維持軍などが担当します。アフガニスタンには多くの武器があり、伝統的に自衛のために必要であったので、すぐに武器をなくすことはできません。しかし通常、動員解除後の支援対象となるために、元戦闘員は武器を持参しなければなりません。それが国内にある武器の総数から見ればわずかであっても、平和に対する象徴的な意味合いは大きなものです。

Q:DDRプロセスの終了にも関わらず治安は不安定なようですが、最近のアフガニスタンの治安状況はどうですか。

A:特に南部が不安定です。治安には、アフガニスタンの政治状況の変化により打撃を受けた「けし栽培」を守ろうとする勢力も深く関わっています。インフラが整備されていない中で政府が全ての地域の治安を維持することは困難で、ある地域で発生した衝突があちこちに広がっているように見えます。多国籍軍からISAFへのアフガニスタン南部における治安維持活動の引継ぎを、タリバンが勢力拡大の機会と捉えていると見られます。


Q:元戦闘員のニーズとはどのようなものでしょう。

A:元戦闘員はどこの国でも非常に不安を抱えているものです。驚いたことに支援の内容を説明すると、全ての元戦闘員が戦闘を止めて故郷に帰還することを希望します。けし栽培をしている人も合法的で収入の安定している事業を紹介すれば、喜んでそちらに移ります。戦闘や非合法なビジネスに代わる機会がないことが問題で、その機会を創造することが重要です。


Q:近年の紛争は地域内の利害関係から発生することが多いということですが、IOMは紛争を予防する活動はしているのですか。

A:IOMは人道支援団体なので直接的な予防活動をしている訳でないのですが、紛争にはさまざまな利害関係者がおり、何かあったときには迅速な対応ができるようISAFなどとの連携を促進すると同時に、地域内の信頼醸成措置などを通じて備えています。また、非合法武装集団と密接なつながりのある麻薬の密売や、人身取引の対策に関しては、警察官の研修など政府機関に対する支援を行っています。